春の欠片が雪に降る
「ちゃいますよ。怒ってんちゃうくて、吉川さんが酔っ払っても僕が困らんようになったらいくらでもって話なんすけどね」
そう言いつつ、立ったままのほのりの手をグッと引き寄せソファーに座らせる。
そのすぐ隣に、木下が座った。
肩が触れ合う距離に、どうしたもんかと自分の膝を見ていることしかできない。
「吉川さん」
「……はい」
頭の中は言い訳だらけだ。
あれを言われたならこれ、これを言われたならあれ。三十をとっくに超えた女が何とも虚しい。
(さあ、何でも来い)
小さく深呼吸をしたほのりだったが。
「さすがに気づいてくれてると思うんですけど、俺、吉川さんのこと好きなんですよ」
木下の声は、そんなほのりに予想外の言葉を告げた。
俯いたまま目を見開いたほのりは、ゆっくりと顔をあげ、隣の木下を見る。
穏やかに微笑む顔が、視界に入った。
「い、いやいや……なんで、お、おかしいじゃんか」
僅かに声が震えている、対して木下はこともなげに声を発し続ける。
「えー、なんでってゆうてもなぁ……まあ正直に言えば見た目がドンピシャ大好きなんっすわ」
「み、見た目……?」
「うん。顔とか脚とか」
(顔とか脚とか……)
喜ぶべきなのか?
「それだけで済んでたら、そんなもん別に吉川さんやなくても探せばその辺おるんやろうけど」
「……そのへん」
どう反応すべきか頭がまわらない。