竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


 一日ぶりのドレスは、やっぱり私には分不相応だ。歩くのもぎこちなく、慣れていない。なんとか椅子には座ったけど、歩いた瞬間にボロが出そうだ。


「もうすぐ約束のお時間ですので、お茶の準備をしてきます。リコはこちらで、くつろいでいてください」
「わかりました!」


(座ってニコニコしていれば、相手に失礼にならないわよね)


 とにかく良いイメージで無害だと伝えよう。実際に私が妾になったというのは嘘なのだから、堂々と答えればいい。胸に手を当て、緊張をほぐすように深呼吸をする。すると、扉からコンコンとノックの音が聞こえた。


「迷い人リコ様にお客様です。入室の許可をお願いいたします」


 案内人の声が聞こえ、リディアさんが対応している。アビゲイル様がもうすぐそこまで来ている。最初の挨拶の言葉を頭で繰り返し、再び呼吸を整えようとした時だった。
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