竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜

03 竜王の治療


――迷い人?


 迷子と同じ意味だろうか? でももともとこの世界の住人ではない私は、肯定して良いかわからず黙ってしまう。すると竜王の隣でじっと私を見ていた人が「そうかもしれませんね」とうなずいた。


「シリル、おまえもそう思うか?」


 竜王にシリルと呼ばれたその男性は、私をちらりと横目で見ながら話し始めた。


「彼女がここに現れた時、空中からいきなり出てきたのを確認しました。どこからか駆け寄ってきたわけじゃありません。何もないところから、急に出現したのです。それにこの服装。平民にしては良い生地ですが、護符の刺繍が一つもない。脚を出すことや赤の衣を着ることにも抵抗がないようですし、異文化で育った人間である可能性は高いかと」


 それを聞いた竜王は「ふむ」とうなずき、何か考え込んでいる様子だ。なんとなく二人の口ぶりから「迷い子」に対して、危機意識を持っていないように感じる。
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