俺様弁護士は激愛を貫きとおす
「セリフ、覚えた?」

 ストーリーは頭には入っているものの、セリフまではまだ覚えていなかった優羽だ。
「まだ覚えてないの」
「吉野はこのラプンツェルの原作知ってる?」

 今回のお芝居はクラスの一人が『ラプンツェル』を題材にオリジナルで脚本を作ったと言っていた。
 優羽は読書は好きだったけれど、ラプンツェルの原作は読んだことはなかったので、ふるふるっと首を横に振る。
「城ヶ崎くんは知ってるの?」

「これをやるって決まった時にどんな話だろうって調べてみた。まぁ……童話の原作が意外と残酷な話だったとかはよくあるんじゃないか?」
「あ、ラプンツェルってグリム童話だったかしら」
「みたいだな」

 グリム童話と呼ばれているものは、童話とは言われているけれど、もともとの原作は子供向けのものではない。伝承を集めた民話のようなもので、それ故に元は教訓話であったことから、残酷な描写もあったというのは有名な話だ。

 城ヶ崎に言われて興味を持った優羽は、原作を調べてみた。
 それを見て、あの時城ヶ崎が言い淀んだ理由が分かった。

 塔の中で育ったラプンツェルは、その声に惹かれた王子と何度も逢い、挙句子供までできてしまうというお話だったらしいのだ。
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