跡取りドクターの長い恋煩い
 「……ねぇ、そーしくん?」

 「ん?」

 「えみりも、アレやりたい!」

 「……?  花吹雪か?」

 フラワーシャワーという言葉を知らなかった俺は、花吹雪の事か? と言って尋ねたが、笑美里にも伝わったようだった。

 「お花はもってないもん。ちがう、ちがう。
 えみり、チューしたいの」

 「はぁ⁉」

 「そーしくん、ちょっときて。こっちむいて」

 「え、ちょ、何を……」

 パーティ仕様の俺は、その日柔らかいジャケットを着せられていた。

 そのジャケットの襟をワシっと掴み、笑美里に無理やり屈まされた。

 「うわっ……」

 あっという間に、ぶちゅ〜っと笑美里に口付けられた。

 びっくりするくらい柔らかい唇。

 甘いっ!  ……これはミルキーの味だ。

 「ふわぁ〜!  チューってやわらかいね!」

 ……いや、柔らかいのは笑美里の唇だろ?

 ニコニコ笑いながらも、俺のジャケットの襟を離さない笑美里。
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