無趣味なニセモノ令嬢は、乙女な騎士の溺愛に気づかない

 さて、ハンカチの刺繍も終わったし、ブランケットも昨日完成した。あと必要なのは……そう考えながらブランケットを畳んでいると、レイラがこちらをじっと見ていることに気づく。俺が作ったハーブティーを飲みながら、頬に手を当て微笑んでいた。


「よく作るわねぇ」


 本当に感心しているように言うので、愛する人の苦手な部分を俺が代われることに喜びを感じる。


「レイラ、寒くないか?」


 出来上がったばかりのブランケットを、レイラのやや膨らんだお腹にかける。


「ありがとう。あなたの作ってくれたブランケット、この子が産まれたらお昼寝に使えるわね」
「君とのおそろいで、もう1枚作ろうか?」
「……あなたは使わないの?」
「よし!あと2枚作って、家族全員でおそろいだな!」


 俺が拳を握って言ったからか、レイラはクスクス笑い始めた。そしてゆっくりと俺に顔を近づけてくる。彼女の昔と変わらない綺麗な瞳に見つめられると、吸い込まれそうなきもちになってクラクラする。


「私、あなたを見ているのが、唯一の趣味みたい」


(俺自身が愛する妻の趣味にもなっているとは、なんて素晴らしいんだ!)


 近づいてくるレイラの顔を両手で包むと、彼女はふふっと可愛らしく笑う。俺はこれからも未来永劫、自分らしくいられることに感謝し、愛する妻に口づけをした。


 
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