独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
女性に挨拶し、秘書課を後にする。

副社長室の前を通りかかったとき、扉が半開きになっているのに気づいた。

切れ切れだが、話の内容が聞こえてきた。

盗み聞きのようで忍びなく、足早に通り過ぎようとすると、ひと際大きな女性の声が響いた。



「――羨ましいわ。私だって結婚したかった」



この声……どこかで聞いた。



「……今さらよく言う。突然出て行ったのはお前だろ。俺がどれだけ……」



唸るような瑛さんの返答に、足が止まった。



「だから謝ったでしょ。あなたの奥様にも直接会って謝りたいのに、どうしてダメなのよ?」



「会わせるつもりはない。この間も話したはずだ」
 


突如自分の話題が出て、ビクッと肩を竦める。



「元婚約者のお前がいきなりここに来たら混乱を招く。早く帰れよ」



「おあいにく様、おじ様に今回の来社の件は了承いただいているの」



「は?」



「婚約破棄のせいで、最も大きい分家のひとつであるうちと、本家の仲が悪いと世間は思っているわ。今後業界内、各種取引にも影響がでないとも限らない。だからこうして友好アピールをして、後腐れはないと見せつけに来たのよ」



話の内容から、この女性が朝霞さんだとわかった。

手にした筆記用具を強く握りしめる。



「注目を集めるのが目的。部屋の扉を少し開けているのも、そのためよ」



彼女の声に、肩がびくりと跳ねた。


まさか私がここにいるのに気づかれている?
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