独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「……やりすぎだろ」



「だって、瑛。後悔しているのよ」



「お前がどんなに悔いても時間は巻き戻らない」



不機嫌そうな口調の彼が、足早に扉付近に近づいてきた。

開いたドアのすぐ近くに佇んでいた私を捉える。

瑛さんの目が一瞬大きく見開かれ、気まずさに下を向いた。

瑛さんは無言でドアを閉じ、その後ふたりの会話はまったく聞こえなくなった。


ドクドクと鼓動が大きく耳に響く。

預かった荷物を持つ手が、小刻みに震える。

耳にしたばかりの情報が、頭の中をぐるぐる回っている。



朝霞さんは行方不明じゃなかったの? 



瑛さんは連絡をとっていたの?


 
疑問の答えは、なにひとつ返ってこない。

私と目が合った瞬間、彼はなにを思ったのだろう。



「――新保さん?」



背後から声をかけられ、ハッと我に返る。

振り向くと、三橋さんが心配そうな表情で立っていた。

外出用のバッグを握っているので、帰社したところなのだろう。



「お、お疲れ様です。失礼、します」



みっともないくらいに狼狽えながらも挨拶し、踵を返す。

やってきたエレベーターに急いで乗り込み、総務課へと戻った。


帰り支度を済ませ、退社した際もどこか上の空だった。

妊娠がわかってから、送迎車で通勤するよう言われている。

元々彼は私の電車通勤を快く思っていなかった。

けれど送迎されている姿を社員の誰かに目撃されると困るので、渋々折れてくれていたのだ。



『彩萌とお腹の子どもになにかあったら、俺は自分が許せない』



経営者一族が狙われる場合があると懇願され、提案を受け入れたのはつい最近だ。
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