独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「時芝一族は分家の中で勢力が大きく、態度や意見が目に余る。しきたりの負の象徴のようなものだ。プライドと欲の塊の人間を娶るなんて冗談じゃない」



「でも、こんな真似をして今後なにかと大変なんじゃ……」



「気にするな。意味不明な上流意識などうんざりだ」



ぴしゃりと言い捨てられ、それ以上話を続けられなかった。

けれど時芝夫人の声が、頭にこびりついて離れない。


……やはり私では里帆さんの代わりにもならないのだろう。

突きつけられた現実が、鋭い棘のように心に深く刺さる。

日菜子さんはずっと私を睨みつけていた。

今後、きちんと彼女と対峙できるだろうか。

どうしようもない不安に駆られ、胸元をギュッと握る。



……自分で決めた結婚だ。



弱音なんて、吐いちゃいけない。


瑛さんは約束通り母に病院を紹介し、治療の手配もしてくれた。

時折電話で話す母の声は明るく、安堵する一方で、自分の責任をきちんと果たせるか怖くなる。



瑛さんはこのまま結婚して、後悔しないの?



唇を固く結んだままの端正な横顔に、心の中で問いかける。

その後、結婚式の煌びやかな衣装を何着か試着したが、気分はまったく晴れなかった。
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