【砂の城】インド未来幻想
 今まで威厳を保つべく強い口調であったシャニのそれが、一転して嫌味なほど丁寧なものに変わっていた。これには一体どのような意図があったのだろうか。二人の退場を促したのち、シャニは背を向け群衆に語りかけた。しかしその時にはそんな欠片(カケラ)も見せないことが、少女達にはどうにも不気味に思われた。

 シャニとは正反対に長身で細身の家臣は、二人を裏地へ招き座らせ、砂の城へ辿り着く為の経緯を話した。(しわ)の寄った(うつ)ろな眼と口は、機械仕掛けのようで感情を見せない。シュリーとナーギニーはそれに気付き、お互いの顔を思わず見合わせたが、家臣はそんなことはお構いなしという調子で畳みかけ、終えるやさっさと帰ってしまった。

「ナーギニー、おめでとう」

 いささか呆気(あっけ)に取られながら、小さくなっていく家臣を見送ったが、隣から射し込まれる陽差しのような眩しい光を感じ取って、少女はようやく表情を緩ませた。

「ありがとう……シュリー」

 けれどこれで本当に良かったのだろうか? ナーギニーは伏し目がちに微笑んで、その長い睫を震わせた。

 代表者に選ばれたからには、今日から二週間を確実に救われたことになる。しかしその後の身の振り方は、やはり自分では決められない。あの青年の存在が、むしろ自分の心を締めつけるかもしれない。何より……城で再会を果たすきっかけにと大切にしていた、あのマントは失われてしまった。


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