虐げられた臆病令嬢は甘え上手な王弟殿下の求愛が信じられない
全て「できたら嬉しい」と、必ずくる未来だと信じていなかったのだ。
甘い願いを告げて、そんな未来を想像することで精神を維持していたのだと──。
オリビアが泣いているのを見なくなったから、安心していたのだ。
私に触れるのも拒絶しなかった。笑ってキスを受け入れて幸せそうだった。
だから、もう大丈夫だと──思っていた。
あの日、会議のためにスカーレットが人の姿でオリビアのいる部屋を訪れた。いつもはウサギの姿をしているのだが、さすがに今後の会議となるので人の姿に変えてもらったのだ。
オリビアも眠ったところだったので安心していた。
会議も一時間ぐらいだったので、大丈夫だろうとオリビアから離れた。
思えば《蝴蝶乃悪夢》という魔導具の効果を甘く見ていた。あれは現実に起こったものを悪夢へと昇華し、宿主の精神力を削って、現実に戻れないように対象者を追い詰める。
永遠に眠り続けるよう悪夢と現実をすり替えて、絶望させるものだという。
会議の途中でオリビアの様子を見に部屋を訪れた時──。
暖炉の炎が消えかけており、窓が全開で開いていてカーテンが風で大きく揺らぎ、部屋の床に雪が積もり始めていた。
ベッドで眠っていたオリビアの姿がない。
「──っ」
言葉を失った。
頭が真っ白になった。
部屋の外には警備兵がいる。防御結界があり外からの侵入は不可能。
オリビア自身で飛び出して行った。
その結論が出た瞬間、窓から飛び出して雪の中を走った。
足がおぼつかず、転びそうになりながらも駆けた。
(どうして、気づかなかった。オリビアはつらい時だって、悲しい時だって自分を押し殺せる人間だと、知っていたはずなのに!)
雪のせいでオリビアの匂いが弱々しい。
こんな雪の中を薄着で歩いていたら──。
『こっち、こっちだよ』
声がした。
幼い子供の声。
進んだ先にオリビアはいた。雪で体が埋もれつつあった。雪を払って抱き寄せると体は冷え切っていて、心臓の鼓動もどんどん小さくなっている。
それは明確な死を意味しており、体が震えて喉が詰まって声が出ない。
甘い願いを告げて、そんな未来を想像することで精神を維持していたのだと──。
オリビアが泣いているのを見なくなったから、安心していたのだ。
私に触れるのも拒絶しなかった。笑ってキスを受け入れて幸せそうだった。
だから、もう大丈夫だと──思っていた。
あの日、会議のためにスカーレットが人の姿でオリビアのいる部屋を訪れた。いつもはウサギの姿をしているのだが、さすがに今後の会議となるので人の姿に変えてもらったのだ。
オリビアも眠ったところだったので安心していた。
会議も一時間ぐらいだったので、大丈夫だろうとオリビアから離れた。
思えば《蝴蝶乃悪夢》という魔導具の効果を甘く見ていた。あれは現実に起こったものを悪夢へと昇華し、宿主の精神力を削って、現実に戻れないように対象者を追い詰める。
永遠に眠り続けるよう悪夢と現実をすり替えて、絶望させるものだという。
会議の途中でオリビアの様子を見に部屋を訪れた時──。
暖炉の炎が消えかけており、窓が全開で開いていてカーテンが風で大きく揺らぎ、部屋の床に雪が積もり始めていた。
ベッドで眠っていたオリビアの姿がない。
「──っ」
言葉を失った。
頭が真っ白になった。
部屋の外には警備兵がいる。防御結界があり外からの侵入は不可能。
オリビア自身で飛び出して行った。
その結論が出た瞬間、窓から飛び出して雪の中を走った。
足がおぼつかず、転びそうになりながらも駆けた。
(どうして、気づかなかった。オリビアはつらい時だって、悲しい時だって自分を押し殺せる人間だと、知っていたはずなのに!)
雪のせいでオリビアの匂いが弱々しい。
こんな雪の中を薄着で歩いていたら──。
『こっち、こっちだよ』
声がした。
幼い子供の声。
進んだ先にオリビアはいた。雪で体が埋もれつつあった。雪を払って抱き寄せると体は冷え切っていて、心臓の鼓動もどんどん小さくなっている。
それは明確な死を意味しており、体が震えて喉が詰まって声が出ない。