スパダリ部長に愛されてます
「返事はすぐじゃなくていいし、
彼とのことがはっきりと片付いてから返事をくれないか。
社内恋愛になる不安はもちろんあるだろうけど、ちゃんと責任を取るつもりで言ってる。
結婚を前提に付き合って欲しい。」

急な話でびっくりした。
私の気持ちが部長に傾いているのははっきりと自覚していた。
部長が私と同じ気持ちだったことに驚いたけど、
こうして誠実に話をしてくれたこと、ましてや、「結婚」という言葉まで出てきた。
素直に嬉しい。

小さい声になったけれど、部長の目を見て、
「はい」としっかりと返事をした。

すると、心底ほっとしたように、部長の表情が和らいだ。
「あーーー、良かった。
不安だったんだよ、自信もなかったし。」

「でも、私こそ、部長にふさわしいんでしょうか。
だって、秘書課の方とか、営業部の方々とか、あの、いろいろと聞いてます。」
一応、確認してみる。
社内恋愛の上に、いろいろと絡むと大変すぎる。

「あーーー
そうか、そうだよな。
いや、全てちゃんとお断りしてる。
断じてやましいことなんてないから。」背筋を正して返事をしてくれる。
と思うと、「君のほうは?近藤とかいろいろ声がかかってない?」と聞いてきた。
「え、私ですか??
いえいえ、滅相もございません。
そんな気配もないですよ。」
どうして部長がそんな心配するのかわからないけれど、
こんなに愛想の無い私に声をかける人なんていないもの。
姿勢を正して、全否定する。

「そうか、安心したよ。」
にっこりと優しく微笑まれる。
「うふふふ。
はい、私も嬉しいです。
彼とのこと、ちゃんと終わりにしてきます。」
見つめ合って、しばらく沈黙が流れた。
もっともっと部長のことを知りたいと思ったが、私にはやらなければならないことがある。
「今日はもう帰ろうか。」
「はい。」

少し歩くけれど、冷たい夜風が気持ち良いのと、
タクシーの中よりも、2人きりになりたくて、手をつないで家まで歩く。
私の家に近づくにつれ2人の言葉は減る。
あっという間に私の家の前に着いた。

私のマンションの前で、部長と見つめ合った瞬間、強く抱きしめられた。
その後、前回と同じように、
頬にキスをされるんだと思っていたが、
ぐいっと顔を持ち上げられ、唇にキスをされた。
何度かついばむようにキスを重ねる。

名残惜しいように、部長にぎゅーっと抱きしめられ、その日もそこで別れた。
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