成瀬課長はヒミツにしたい
「水木くん。至急、社長室まで行って」

 部長は焦った様子でそれだけ言うと、受話器を落としそうな勢いで電話機に戻す。

「え? 何かあったんですか?」

 真理子は状況がつかめず首を傾げた。


「至急、調査が必要なものが出てきたみたいなんだ。今抱えている業務は、全部こっちで引き継ぐから。しばらくは缶詰になるかも知れないな……」

 普段はだるまのように、穏やかさを絵に書いたような部長の焦った様子に、ただならぬ状況だという事だけは理解できた。

「わ、わかりました」

 真理子は慌ててメモ用紙を掴むと、勢いよく立ち上がった。

「ちょっと行ってくるね」

 隣の卓也に声をかけた真理子は、通り過ぎながら横目に映った卓也の姿に、思わず足を止める。

 卓也は今にも倒れそうな程、顔面蒼白で怯えるようにうつむいていた。

「卓也くん?」

 急いで近寄る真理子に、卓也はビクッと身体をのけ反らせる。

「早く行ってください!」

 卓也の大きな声に、フロア内が一瞬静まり返った。
< 161 / 413 >

この作品をシェア

pagetop