成瀬課長はヒミツにしたい
 そこまで言って、真理子もはっと顔を上げる。

「誰でもはできないが、できないことはない……ってことだよな。特に、システム部の人間には……」

 真理子は思わず口元に手を当てる。

 成瀬の鋭い目が、真理子を正面から見つめた。


「アクセス権限の変更をしたかどうかのログは、こっちで確認できるのか?」

 真理子は目を見開いたまま、しばしフリーズする。

 そして小刻みに震えだす唇を開いた。

「……できません」

「え……?」

「権限変更のログは、残らないんです……。権限変更なんて、普通はしないので……」

 真理子の顔は次第に青ざめていく。


 成瀬は腕を組むと、しばし下を向いて考え込む様子を見せた。

「ちなみに、佐伯が非公開フォルダにアップしたのは、何のファイルだ?」

 しばらくして、成瀬が顔を上げる。

「社長案件の顧客分析のデータファイルです。でも……」

「でも?」
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