成瀬課長はヒミツにしたい
「そう言えば、イベントでのプロポーズのこと。いつから考えてたんですか?」

 真理子がずっと気になっていたことを口にすると、成瀬は少し困ったような顔つきになる。

「あれは……常務に()きつけられたっていうか」

「え?!」

「勢いっていうか、なんていうか……」

「はい?!」

 真理子は目をまん丸に見開くと、しばらくフリーズしていた。

 そして次の瞬間、ぷっと吹き出す。

 常に冷静沈着な成瀬でも、そんな事があるのかと思う。


「怒ったか?」

 困り顔で頭をかく成瀬を、真理子はますます愛しいと思っていた。

「じゃあ、常務にお礼を言わないとですね」

 真理子は首を大きく振ると、にっこりと笑顔を見せる。

「そうだな」

 成瀬の優しい声が聞こえたと同時に、コンコンと扉をノックする音が響き、式場のスタッフが顔を覗かせる。


「そろそろご準備はよろしいでしょうか?」

「はい」

 二人は顔を見合わせてほほ笑むと、準備していたティアラと王冠のスイッチを入れる。

 キラキラと輝き出したそれを、お互いの頭にそっと乗せると、手を取り合って歩き出した。
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