彼女はアンフレンドリーを演じている




――バタンッ



「っ……!?」



 玄関ドアが閉まると同時に、有無を言わさず蒼太の唇が美琴に降り注いできた。

 まだ靴も脱いでいないのに、とキスを受けながら自分より大きな体を押し返そうとしてみたが、もちろん力では勝てなくて。



「っ……蒼、待って……」
「なに」
「一旦落ち着いて、お茶でも……」



 そう言いながらようやく靴を脱いだ美琴は、蒼太を宥めるように笑顔を作ると、部屋の奥へと単身進んでいく。


 泊まるということは、それなりの事が起こることも大人なのだからわかっているつもり。

 だけどそれは、帰宅したばかりの部屋を簡単に片してから蒼太を招き入れ、お風呂を勧めたりテレビを見ながら寛いでいるところから始まる。


 そんな予定を脳内で立てていた美琴だったが、無防備に背を向けたのが運の尽きで。
 お茶なんて飲んでる余裕のない蒼太が、美琴の体を軽々と抱き上げた。



「わ! ちょっと……!」
「俺が欲しいのはお茶じゃないの」



 明かりもないリビングを通り過ぎて寝室まで運ばれた美琴は、そのままベッドの上に下ろされて。
 流れるように覆い被さってきた蒼太が再び唇を重ねると、二人の体内で徐々に熱を蓄え始めた。

 吐息混じりのキスが首筋へと移行して、そのまま鎖骨まで優しく熱く滑る唇に耐えかねた美琴が弱々しく声を漏らす。



「お、お風呂……」
「終わったら一緒に入ればいい」
「えっ! そんっ……」



 肌に触れる一つ一つの刺激が、蒼太に待てを促す美琴を麻痺させていく。

 あれこれ脳内で立てていた予定は総崩れで、でもこれこそがメインであることを、美琴も認めざるを得なくて。
 このまま突き進むことに、徐々に躊躇いは無くなった。


 ただ、服の中に侵入してきた蒼太の手のひらの感触が、羞恥心をMAXにさせる。



「……へ、変な、感じ……」
「ん?」
「同期で飲み友だった、蒼太くんと、こんな……」



 顔を背けて固く瞼を閉じながら、か細い声で囁いた美琴は耳まで真っ赤にして限界の様子。

 こんな行為をする関係になること自体、数ヶ月前までは想像もしていなかったから。



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