彼女はアンフレンドリーを演じている
『今夜、いつもの場所』
不定期かつ一方的で、こっちの予定を伺うこともしない文面に苛立ちを覚えるも、金曜日の夜なのに予定なんてない美琴の心は悲しくなる。
「どうせ暇人ですよ……」
「あーほら、やっぱ男じゃん」
「な! 覗かないでよっ」
「彼氏じゃねーなら、え、まさかセフ」
「違う!」
美琴が操作していたスマホ画面を背後から盗み見た遼は、また揶揄い混じりの質問をしようとしたが速攻で否定された。
みんなが使う自販機の前で、仲が良いのか悪いのか判断つかない会話が、また始まろうとした時。
二人の下にやってきたのは、同じく自販機での飲み物を買いに来た、蒼太だった。
「あっ……」
「あれ蒼太だ、お疲れさん」
一瞬、表情が引き攣ったように見えた蒼太だったが、直ぐにいつもの笑顔を浮かべているから、きっと見間違いだと思った美琴。
「おい、お前の人気がうちの部署にまで届いてる」
「え、あ、そうなの? ありがと」
「いいなぁ仕事もできてモテるやつは。どうせいつもチヤホヤされてんだろ」
腕を組みながら、蒼太の成績と上がり続ける好感度、そして人気を羨む。
すると、そんな遼を構うことなくゆっくりと近づいてきた蒼太に対して、何故か美琴の体に緊張が走った。
「……飲み物」
「へ?」
「買いたいから、そこ避けて美琴ちゃん」
「あ、ごめん……」
そう言われて直ぐに自販機前から離れると、ありがとうと声をかけて、ペットボトルの飲料水を買った蒼太。