彼女はアンフレンドリーを演じている
その場でキャップを開け早々と数口飲むと、気持ちが落ち着いたのかようやく尋ねることができた。
「で? 二人揃って何してたの?」
「ああ、久々に会ったからつい話し込んじゃった、な?」
「え……うん」
同期が三人揃ったなら、もっと会話が盛り上がっても良いはずで、遼はその気満々だったのだが。
美琴からは笑顔が消え、蒼太は口角を上げてはいるものの目が笑っていない。
「じゃ、私先に戻るね」
「あ、待って俺も、一緒に戻ろ?」
「え……」
蒼太が美琴に続こうとした時、明らかに嫌な表情を向けられた。
でもその理由も蒼太だけは知っていて、知っているのにそれでもつい、一緒に歩きたい気持ちを主張したくなる。
「うーそ、遼と少し話してから戻るよ。じゃあね美琴ちゃん」
「美琴、今度同期会しような〜」
「……お疲れ様」
遼の提案は乗り気になれない美琴が、正直にスルーを決めて部署へと戻っていった。
自販機の前で残された男二人は、これといって盛り上がるわけでもなく、互いに沈黙したのち先に口を開いたのは。
「蒼太と美琴って何かあったの?」
「は、何かって何?」
「例えばぁ……男女間のもつれ的な?」
聞きにくい事も最終的には口に出してしまうのが、素直で裏表のない遼の良いところ。
しかしその読みは外れていたようで、笑顔を浮かべた蒼太も、そんな遼に応えるよう正直に否定した。
「ないない、今も昔も全くない」
「ふ〜ん。まあお前モテるし変に仲良くして美琴が他の女から恨まれても嫌だろうしな」
その発想はあながち間違いでもなくて、事情を知る蒼太はこれ以上核心に迫る質問を受けないように、話題を逸らす。