彼女はアンフレンドリーを演じている
シャンパンが注がれたグラスを持って、向かい合って座る二人が微笑みあった。
いつもはビールジョッキで雰囲気の欠片もなかったが、今は少し照れくさいほどにお洒落感が漂っている。
「乾杯」
「乾杯」
チンと高い音を響かせて、お互いが揃って口元にグラスを運んだ。
美琴の用意したシャンパンは爽やかな果実の味がして、スッと体内に浸透していく。
「美琴ちゃんとシャンパン飲むって、なんか新鮮」
「ふふ、私たちビールと日本酒ばかりだったもんね」
「今度はワインも飲もうよ」
「私詳しくないから、蒼太くん選んでくれる?」
「いいよ」
こうして何気ない会話を好きな人と交わせる喜びを噛み締めながらも、美琴は何だかソワソワしていて。
我慢できずに立ち上がると、頬を赤く染めながら口を開いた。
「あのね、蒼太くんにクリスマスプレゼント用意したの」
「へ?」
「持ってきていい?」
「い、今!?」
蒼太の返事も聞かぬまま、リビングを出ていった美琴の背中を不思議そうに眺めていると。
やがてクリスマスカラーのリボンを結んだ、真新しいスーツケースを抱えて美琴が戻ってきた。
それを床に静かに置くと、申し訳ないような表情で美琴が話し始める。
「プレゼントというより弁償ぽくなっちゃったけど……」
「スーツケース。……もしかして」
「そう、一緒に出張行った帰り、私を助けてくれた代わりに傷つけちゃったから」
何にしようか悩みに悩んで、あの時に階段から滑り落ちて傷ついたスーツケースを思い出した。
いつどんな時も、自分が気付かないところでさえも見守ってくれていた蒼太の存在が、凍りついた美琴の心を溶かしてくれて。
恋をする喜びと幸せを教えてくれた、そんな蒼太へ伝えたかった。
「私のこと、好きになってくれてありがとう」
そう言って微笑んだ美琴が世界一可愛くて、見惚れてしまった蒼太。
この夢見心地の時間が一生続くようにと願いながら、美琴の手を取って優しく握った。
「俺の方こそありがとう、スーツケース大切に使うよ」
「……うん」
「実は俺も美琴ちゃんに渡したいもの、あるんだ」
「え?」