彼女はアンフレンドリーを演じている
周りのデスクで仕事する社員は、小山が怒られているのではなく、美琴VS小山の背後にいる蒼太という図がしっかり浮かんでいるのだが。
「小山くんかわいそう」
「冴木さんてほんと冷たい人」
「仕事はできてもあれじゃあねぇ」
「あたし一緒に仕事したくない、毎日怒られそうだもん」
離れたデスクの女性社員達は、二人の会話内容が聞こえない分、更に美琴の悪評が広まるような見方になっていた。
こうして、日々イメージダウンを繰り返す美琴の下に、何食わぬ顔で遅れてやって来たのは。
「小山〜どうだった? 交渉成功した?」
端正な顔立ちと高身長だけでなく、その爽やかな笑顔と柔らかい声に社内の女性人気も高い、営業部のエース。
イメージダウンとは真逆の、知らぬ間に積まれたイメージアップが付き纏う、何かと得する同期の男だった。
「か、香上さぁん!」
「…………」
頼れる先輩、香上蒼太の姿を見るや否や、子犬のように尻尾を振って出迎える小山に、もう怖いものはなかった。
そして美琴の陰口を叩いていた女性社員達は、営業部の蒼太が自分達の部署にやってきたことに、テンションがギュインと上がっている。
あちこちの異変を感じ取り大きなため息をつく美琴は、小山に指示を出した蒼太へと静かに睨みを利かせた。
「香上くんが口出ししてると、いつまで経っても小山くんが成長しませんよ」
「でもね、美琴ちゃんの作る資料っていつも営業泣かせだからさ」
「…………はぁ?」
蒼太の登場で明るくなったと思った場の雰囲気が、美琴の低音ボイスで一瞬にして凍りついた。
いつもシビアな数字を基準に作成される戦略資料は、ある程度営業担当者の説明力が備わっていないと、取引先が納得してくれない。
なので、まだ営業マンとして独り立ちして間もない小山にとっては、美琴の資料はレベルが高すぎる。