彼女はアンフレンドリーを演じている
「私、全然成長してないや……」
そう呟いて手のひらで額を覆うと、大きなため息をついて俯いた美琴。
人と関わりたくないなんて、結局また傷ついてどん底を見る自分が怖いだけ。
しかしそれによって、誰かを傷つけているんだとしたら、自分はここにいるべき人間じゃない。
「ごめんね……」
蒼太がくれた再起のチャンスは、そろそろ終わりを迎えそう。
そう悟った美琴は、自分しかいない空間で謝罪の言葉が自然と漏れた。
「……何が?」
「うわぁっっ!?」
誰もいないはずが突然隣から声が聞こえてきて、光の速さで顔を上げた美琴。
するとそこには、甘さ控えめの缶コーヒーをゆらゆらと見せつけ、隣の席に座る蒼太がいた。
口を開けたまま驚いている美琴としばらく視線を合わせると、いつものようにフワッと微笑む。
「はは、ビックリしすぎだろ」
部署も違うし、そもそも残業だったのか外回りから帰ったところなのかもわからないから。
目の前に蒼太が現れたことに、驚くのは当然だろうと訴える美琴。
「あ! 当たり前……なんで蒼っ……香上くんがここに」
「大丈夫、俺以外誰もいないから」
「あ……、蒼太くんも残業?」
社内では“香上くん”呼びを徹底していた美琴が、小声ながらもついに“蒼太くん”と呼んでくれて、密かに感動を覚えた蒼太。
「俺も今まで残業だったんだ、んで覗いたら美琴ちゃんいたからきちゃった」
なんて、本当は一時間前に残業を終えていて、廊下から美琴の様子を数分おきに覗いていたなんて知られたら。
多分引かれるだろうなと思っている蒼太は、それを隠すために嘘をついた。
「……きちゃったじゃないよ、仕事終わったなら直ぐ帰った方が」
「美琴ちゃんは? 何時まで残業?」
「……終電」
「わお社畜」