彼女はアンフレンドリーを演じている




 一緒に飲みに行った後の週明けは、特に落差を強く感じてしまう蒼太。

 つい先日、楽しく酒を交わしていて共に夜道を歩いた仲なのに、今は美琴を無愛想だと語る他の連中と同じ扱いと対応を受けるから。


 美琴の中で、自分は社内恋愛恐怖症の壁を越えるほどの、魅力的な男になれていないことが、毎回嫌でも伝わった。



「……手伝いたい」
「は……?」
「手伝わせて、今やってる仕事」



 静寂に包まれた職場に、絞るように出た蒼太の低い声は、美琴の耳にスッと届く。

 聞き間違いではない言葉に作業の手をゆっくり止めると、ようやく蒼太に視線を向けてくれた美琴だが。



「何言ってんの、大体部署違うのに……」
「部署違うから何? 同じ部署の奴らでさえ手伝いもせずに帰っただろ」
「それは、私が蒔いた種で」
「しかも後輩の尻拭いなのに」
「っ!?」



 美琴が誰にも口にしていない真実を、何故蒼太が知っているのかと目を見開いて固まる。

 すると、何処か呆れたようにため息をついた蒼太が、座っていた椅子を少しだけ美琴に寄せてきた。



「美琴ちゃんの今のやり方、今更止められるとは思ってないけど」
「え……」
「だったらせめて、こういう時、俺には甘えろよ」



 過去の社内恋愛で酷い裏切られ方をした美琴の、同じ過ちを繰り返さない為に人を遠ざけたい気持ちは、わかってあげたいと思っている。

 だけど、本来とは違う性格と人柄を演じてまで人を遠ざけ続ければ、完全孤立していく美琴を容易に想像できた。



「事情を知ってる俺は、他の奴らとは絶対違う」
「っ……」
「どんな事があっても美琴ちゃんの味方だから……」



 今のこの孤独な環境下で聞く蒼太の言葉は、折れかけていた美琴の心を、優しく温かく包んでくれた。
 と同時に、今気を緩ませたら目頭が熱くなりそうで、咄嗟に背を向けた美琴は、下唇を噛みながら必死に耐える。



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