彼女はアンフレンドリーを演じている




 長テーブルが四角を描くように並べられた会議室は、窓際以外は壁に囲われていて、少し圧迫感を感じる。
 そしてそれは、向かいに座る蒼太から放たれる不機嫌オーラも、原因の一つと美琴は思っていた。


 離れた席で別々の作業を続ける二人は、会話もないまま30分くらい経っただろうか。

 すると、カタカタとキーボードを操作していた蒼太の手が、徐々にスピードを落としていき。
 ついに、その動きをやめてしまった。



「……付き合ってんの?」
「はい?」



 パチンとホッチキスを鳴らした直後の美琴が、驚きの顔を上げる。

 そして、さっきまで黙々と作業をしていたはずの蒼太が、苦悩の表情を浮かべてこちらを睨んでいた。


 何が蒼太をそこまで不機嫌にしているのか、記憶を辿っても見当がつかない美琴。


 先週の、エレベーター前で会った時は普通に声をかけられたし、自分も通常運転である無愛想で対応した。

 その後会社を出て直ぐに「デート?」という蒼太の突然の問いかけから始まって、今現在のこの重苦しい空気にまで発展している。

 加えて今度の質問は――。



「……誰が、誰と?」
「言わせんなよ、わかってるくせに」
「わ、わからないから聞いてるんだよ」



 対峙する二人は、更に不穏な空気を倍増させていくが、蒼太の中では不機嫌になる理由はハッキリしていた。



 美琴がデートだと宣言していたその日の夜、駅前の広場で遼と一緒にいるところを見かけたのに。

 しらばっくれるだけでなく、わざわざ名前まで言わせようとする美琴に対して、今以上に苛立ちを覚える。



「ハ、性格悪すぎ」
「はぁ? 蒼太くんこそ何の話か教えてくれないくせによくそんな事……」



――バンッ!

 苛立ちがピークに達した蒼太は、言葉を遮るようにノートパソコンを乱暴に閉じた。

 会議室に響いたその音に、一瞬ビクリと体が反応した美琴も、最近の違和感と今の蒼太の態度には物申したくて。
 つい、挑発的な言葉を選ぶ。



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