彼女はアンフレンドリーを演じている
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三年前――。
日中は暑い日が続くこともあり夏の名残はあるものの、夜にもなれば涼しさを感じて秋がやってきたことを喜ぶ。
そんな入社二年目の秋を迎えた美琴は、片想いしていた職場の先輩である長屋と、正式に交際して一ヶ月が経とうとしていた。
「美琴、いつもこんなところでごめんな」
「いいえ、全然構いません、一緒にいられるならどこでも……」
飲み屋街にあるラブホテルから、仲良く手を繋いで出てきた美琴と長屋。
交際の始まりはどちらからともなく、気づけばホテルに向かっていてそういう関係になったが。
後輩である美琴の好意に薄々気付いていた長屋が、そのように仕向けたとも言える。
「あ、そこのコンビニで煙草買っていい?」
「はい」
そんな会話をして前方に視線を向けた美琴は、見覚えのある同期の顔に驚愕して、咄嗟に繋いでいた手を離した。
「……そ、蒼太くん!?」
「あ…………」
同期という共通点以外は、それほど関わる要素のなかった蒼太が、一瞬驚いた表情をしたように見えた。
加えて、ここ最近容姿と性格に注目が集まって人気が出てきているのを知っていたので、美琴は徐々に焦り始める。
「ん? 知り合い?」
「……営業部で、同期の……」
「え!?」
何せ二人は同じ部署内の男女ということもあって、今はまだ社内の人間には明かさず隠れて交際していた。
それなのに他部署とはいえ美琴の同期である蒼太に、ラブホテルから出てくるという決定的な場面を目撃されたから。
言い逃れのできない状況に二人が沈黙していると、その空気を変えたのは蒼太の方だった。
「お疲れ様です」
「お、お疲れ様……です……」
何を気にすることなく営業スマイルを浮かべてその場を去っていった蒼太の背中を、不安そうに見つめる美琴。
社内の人間に、しかも今注目を浴びている同期に二人の交際を知られたとなれば。
瞬く間にその事実が拡散されて、社内でネタにされたり冷やかされるに違いないと、不安がよぎった。