彼女はアンフレンドリーを演じている
ちょうど仕事が終わる時間帯ということもあり、店は混雑していて賑わいを見せている。
そんな中、唯一空いていたカウンター席に通された二人は、温かいおしぼりを手に取って安堵のため息をついた。
「何とか終えられてよかったな」
「うん、私の説明変じゃなかった?」
「完璧だったよ、小山の方が危なかしい」
可愛い後輩を少し弄った蒼太は、スマホを取り出すと先ほど届いた画像を見せてきた。
そこにはTシャツに短パン姿の小山が、右足首に巻かれた包帯を指差して作り泣き顔を浮かべている。
「病院、時間かかってんなーと思ったら待ち時間が長かっただけで、小山はただの捻挫だったんだって」
「そっか、でも捻挫も放っておくと良くないって聞くから、骨に異常なくて良かったね」
「……なんか」
「ん?」
「小山に優しいね、美琴ちゃん」
そう言ってじっと見つめてくる蒼太に、落ち着きを取り戻していた心臓がまたしてもドンと音を立て、眼差しの意図を探ろうとしてしまう。
これ以上は間が持たないと判断した美琴は、パッと視線を外して、取りあえずビールを二つ注文した。
「そ、そんなことないでしょ」
「小山の代理、突然立候補したし」
「それは業務のためでもあるから」
「じゃあ俺が捻挫しても心配してくれる?」
「す、するよ当たり前……」
「ふーん」
「っ……何、さっきから……」
まだ乾杯も、アルコール摂取もしていないのに、まるで飲んだ時の蒼太のように甘えるような声でよく喋る。
この状態でこれからくるビールを飲んだら、もっとあれこれ聞かれてしまうのかと考えると。
先にチェックインするべきだったと、美琴は少し後悔した。
「はーい! 生二つ!」
店員の元気な声で空気が変わり、感謝した美琴がビールジョッキを持つ。
「蒼太くん、乾杯しよ?」
「うん」
促されてジョッキを片手に持つ蒼太は、作り笑いを浮かべてコツンと当ててきた。
そしてグイッとビールを流し込み、あっという間に半分がなくなってしまうと。
複雑な思いを抱えた横顔が、ほんのり赤らんだのは、アルコールのせいにしては早すぎる。