彼女はアンフレンドリーを演じている
そして、それだけでなく――。
「今の小山は営業での成功体験を増やすこと」
「……香上さん」
「自信つける前に折れたら、元も子もないだろ?」
蒼太の優しい微笑みを向けられた小山は、先輩の温かみと感動を再び覚えて、俄然やる気に満ち溢れていたが。
実は小山が美琴の事を、何かがキッカケで好意を抱くようになっては困る蒼太が、それとなく嘘ではない言葉で小山の心情を自身に向ける。
そんなやり方でしか、美琴の穏やかな仕事環境を守ることも、自分の秘めた想いを継続させることもできない蒼太の下に。
女性社員が二人、背後から駆け寄ってきた。
「香上さ〜ん!」
「はい?」
それは先程美琴と同じ部署にいた若い社員達の中の二人で、わざわざ蒼太と小山を追いかけてきたらしい。
正直、親密に会話した事もなければ名前も知らない後輩二人だが、それでも蒼太は嫌な顔一つせずに笑顔で迎え入れた。
「あ、あの、突然で大変申し訳ないんですけど……」
「え、どうしました?」
「……今度、一緒にお食事行きませんか?」
二人の内の片方が、紅潮した顔を少し床に向けて蒼太を食事に誘ってきた。
それを隣で聞いてしまった小山も頬を赤く染めながら、やはり蒼太は社内で圧倒的にモテる人だと確信する。
他部署の、こんな可愛らしい後輩が自らお誘いしたくなるほどに、香上蒼太という男は男性から見ても女性から見ても、魅力的な人間なのだ。
すると、その裏に隠された気持ちに気付かない訳がない蒼太は、やはり優しく微笑んで口を開く。
「良いですよ」
「……え?」
あっさりとオッケーをもらえて、まさかこんなスムーズに話が通ると思っていなかった女性社員は、驚いた表情を浮かべ顔を上げた。
その先の、恋心までもが受け入れられた気になったから。
「俺も他部署の人達と交流する機会はたくさん欲しいので」
「あ、あの……?」
「営業部にも数人声かけ……」
「ち、違います! 私、香上さんと二人きりで行きたいんです!」
話の途中で耐えきれなくなった女性社員は、少し強気な気持ちで蒼太にぶつかっていった。