彼女はアンフレンドリーを演じている




「お待たせしましたー! 焼き鳥タレと塩です!」



 その時、待ちに待った焼き鳥が二人の間に置かれ、お腹が空いていた蒼太がいち早く手を伸ばした。

 しかし、同じく空腹を訴えていた美琴が微動だにしないので、疑問に思い顔を向けると。



「…………それ、どう受け取っていいの」
「っえ? 何のこと……」
「耳まで真っ赤だよ」
「!?」



 蒼太の想いを、直接触れられたことで十分伝わった美琴は、その実感と高揚感でどうやら顔を赤く染めていたらしく。
 自覚もなかったから隠す間も無く、蒼太に見られてしまったことで一気に動揺が走る。



「て、店内暑くて……」
「普通だよ」
「久々のお酒で酔いが……」
「誤魔化さないで」



 もしかして答えをもらえそうな気がした蒼太が、食い気味で美琴をどんどん追い込んでいく。

 少なくとも美琴の反応が、嫌悪感からくるものではなく、嬉しさや恥じらいからくるものだとしたら。
 絶対にこの機を逃したくなかった。



「もしまた俺にキスされたら、どうする?」
「はっ……はぁ?」
「また、ビンタする?」
「っ!」
「それとも……」



 たがが外れたように、今まで我慢していたこと、知りたいことが溢れ出ている蒼太。
 そこに酒の力も相まって、普段よりも自分の気持ちが、表情が素直に表れた。

 蕩けるような視線が美琴を捉えて離さず、また自分の希望通りの答えをつい求めたくなる。



「……そ、蒼太くんもう酔ったの?」
「酔ってないよ」
「こ、ここで話す内容じゃ、ないでしょ……」
「じゃあホテルいこ」
「!!だ、だめだよ絶対!」



 突然血相を変えて慌てる美琴だったが、自分達は今出張中あり、ホテルが家のような役割であるから。
 蒼太はただ単に、チェックインして部屋で話そうとしていただけだと考え直して、再び赤面した。



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