彼女はアンフレンドリーを演じている
「ほんと、遠慮しなくても良いのにな、小山どう思う?」
「え! 俺すか?」
まさか自分に意見を求められるなんて思っていなかった小山が、絵に描いたように慌てている。
すると、少しだけ哀愁漂う微笑みを浮かべた蒼太が、ぽつりと呟いた。
「きっと、美琴ちゃんは俺のこと大嫌いなんだろうな」
「……え」
美琴と蒼太のやりとりからは、大がつくほど嫌われているふうには見えていなかった小山が、そうだったの?と首を傾げる。
しかし質問した女性社員には効果覿面だったようで、疑念を晴らすための自分の質問が、罪のない蒼太を傷つけてしまったと反省した。
「ご、ごめんなさい、失礼な質問して……!」
「ううん、まあ俺みたいな奴を良く思わない人はたくさんいるから」
「そんな事ないです、香上さんの悪い噂なんて聞いたことないですから」
「そう? 安心した、じゃあそろそろ仕事に戻ります」
「はい! お疲れ様でした」
「お疲れ様」
最後に眩しいほどに爽やかな笑顔を向けた蒼太は、別れた女性社員二人の瞳を蕩けさせると、そそくさと小山を連れてその場を立ち去った。
これで蒼太のイメージは保たれ、美琴への逆恨みも多分ないだろうととりあえず安心していたが。
営業部のフロアを目前に、小山が余計なことを口走る。
「冴木さんは大嫌いでも、俺は香上さんのこと大好きですから!」
「いや……そこ信じられると逆に凹むわ」
「え!? む、難しい!」
美琴に嫌われてるらしい蒼太を励ますつもりが、逆に凹ませてしまったようで混乱する小山。
それを放ったまま自席に腰を下ろした蒼太は、大きなため息をついて、考え込むよう天井に目を向けた。
「(嫌われてるように見えるんだな……やっぱ)」
後輩の小山は置いといて、美琴と同部署の女性社員二人は直ぐに引き下がった。
美琴の、人を寄せ付けない無愛想な態度は、他人から見れば同期の自分でさえも、美琴の嫌いな人間リストの一人にカウントされていると思い込んでいる。
その事実に、再び大きなため息をついた蒼太は、気を落としたまま仕事を再開した。