あなたと私の恋の行方
「これは、新川君の思い違いということでいいだろうか」
「は、はい!」
祖父の鶴のひと声で疑惑は解消されたけど、これでよかったのだろうかと心配になる。
ただ大河内社長だけがご機嫌な様子だ。
佐野部長は堂々と社長に声を掛けた。
「この度は由香さんに御迷惑をお掛けして、大変申し訳ございませんでした」
目の前で頭を下げている佐野部長につられてしまって、私も同じように祖父に向かって礼をする。
「……これからも、由香をよろしく頼むよ」
「はい。由香さんのことは、私が責任をもって全力でお守りします」
満足そうに祖父は頷いてくれた。
(よかった……)
祖父にまで心配をかけてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいだったけど、佐野部長のひと言で救われた気がする。
ホッとする私を見ている千也君と小谷さんは、なんだか複雑な表情だ。
あとから聞いたのだけど、ふたりは祖父と佐野部長の言葉の意味の受け取り方を心配していたらしい。
『よろしく頼む』
『お守りします』
ふたりの予想通り、後日このやり取りは大河内家で問題になったのだ。
社長が出ていくと、新川課長と社外取締役は千也君や営業部長と別室に移っていった。
どうやらそこには副社長が待ち受けていて、懲罰の問題が話し合われるらしい。
小谷さんも『仕事に戻る』と言って、緊張が解けたのか肩をポキポキ鳴らしながら会議室を出て行った。
残ったのは、私と佐野部長のふたりだけになった。
「西下」
「ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした。私も明日から仕事に戻ります」
なんだか居心地が悪くて、私は会議室から早く離れたかった。
そんな私を部長は呼び止める。
「待ってくれ、俺が君を貶めたんじゃないってわかってくれただろ?」
「はい」
「なんでそんなに嫌そうな顔してるんだ?」
「変な顔ですみません」
素直になれなくて、私は部長の顔が見られない。
「いや、そんな意味じゃなくて……俺のなにが気に障ったのかな」
「気に障る?」
「俺のどこが嫌なんだ?」
そんなこと思ってもいないのに、私の口は考えてもいないことを勝手にスラスラと言いだした。
「全部」
「はあ?」
「今は、全部が嫌です」
「参ったな」
いつもは強引な佐野部長が、なんだか項垂れているように見える。
それでも私の言葉は止まらない。
「自信たっぷりなところ、経験豊かなところ、俺について来いってところ、なんでも出来ちゃうところ」
「それが、俺の嫌いな所なのか」