轍(わだち)〜その恋はお膳立てありき?
「さあ、どうぞ」
「な、なぜわたくしがそのようなことを···」
「自分が発した言動には責任を持ってくださいよ。他人を評価できるのはご自分がその方以上の能力を持っているからこそでしょう?それにあなたの御身分が高いと仰りたいのなら、あなたの能力を証明することこそがノブリスオブリージュに繋がるのではなくて?」
さあ、と、スケッチブックと鉛筆を差し出す清乃に、一片の怯えもない。
普段のオットリとした清乃とは思えないイケメンっぷりだ。
「あなた、一体何様のつもり···」
怒りで震える志津香お嬢様の怒鳴り声を遮ったのは、
「き、清乃様」
「旧島崎財閥(*フィクションです)のご令嬢···だ」
という、突然始まった修羅場を見守っていた、とある招待客夫婦の言葉だった。
「なんと、島崎財閥のご令嬢であられたか。でかしたぞ、千紘」
手のひらを返したように媚びる映二社長にプライドはないのかと呆れる。
「ふん、たかが旧財閥でしょ?こっちは今をトキメク東原建設なのよ」
「志津香さん、たかが旧財閥ではございませんよ。島崎財閥は解体されていても、未だにその力は衰えていない。いわば建設会社の大ボス。怒らせればあなたのお父様の会社なんて一溜まりも···」
「ふざけないで!こんなくだらないパーティ、来るんじゃなかったわ」
テンプレの捨て台詞を吐いて逃げようとするお嬢様。
しかし、清乃はそれを許さなかった。
「くだらないのはあんたのそのプライドの方でしょう?さっさといなくなって欲しいのは山々だけど、その前に滋子と千紘さんに謝りなさいよ。さもなければあんたのお父様の会社に明日はないから」
それは冗談でも脅しでもなく事実であった。
清乃の父は、プライドだけあって他人を蔑ろにする人間を嫌う。
清乃が父親に一言情報を流せば、取引は停止し、建設業界で生き残ることは難しくなるだろう。
「な、なによ、そんな脅しに誰が···」
頑なで愚かな志津子お嬢様が墓穴を掘ろうとした時、
「申し訳ありません。滋子社長、そして鷹司様。ほら、お前も謝らないか」
騒動を聞きつけて、仲介に入ったのは彼女の父親である東原直澄(ひがしはらなおずみ)その人であった。
「お父様!この人私を侮辱して」
「先に他人を貶める言動をしたのはお前だろう?」
いつまでもお嬢様気分の抜けない志津香と違って、父親はまともだったようだ。
「ご無沙汰しております。清乃お嬢様」
「あなたの娘さん?随分と偉い御身分のようね?」
「面目もございません」
「面目とかどうでもいいの。滋子と千紘さんを馬鹿にしたこと、二人が許しても私は許さないから」
ラスボス感満載の清乃は、もはや魔王のような存在感を醸し出していた。
「な、なぜわたくしがそのようなことを···」
「自分が発した言動には責任を持ってくださいよ。他人を評価できるのはご自分がその方以上の能力を持っているからこそでしょう?それにあなたの御身分が高いと仰りたいのなら、あなたの能力を証明することこそがノブリスオブリージュに繋がるのではなくて?」
さあ、と、スケッチブックと鉛筆を差し出す清乃に、一片の怯えもない。
普段のオットリとした清乃とは思えないイケメンっぷりだ。
「あなた、一体何様のつもり···」
怒りで震える志津香お嬢様の怒鳴り声を遮ったのは、
「き、清乃様」
「旧島崎財閥(*フィクションです)のご令嬢···だ」
という、突然始まった修羅場を見守っていた、とある招待客夫婦の言葉だった。
「なんと、島崎財閥のご令嬢であられたか。でかしたぞ、千紘」
手のひらを返したように媚びる映二社長にプライドはないのかと呆れる。
「ふん、たかが旧財閥でしょ?こっちは今をトキメク東原建設なのよ」
「志津香さん、たかが旧財閥ではございませんよ。島崎財閥は解体されていても、未だにその力は衰えていない。いわば建設会社の大ボス。怒らせればあなたのお父様の会社なんて一溜まりも···」
「ふざけないで!こんなくだらないパーティ、来るんじゃなかったわ」
テンプレの捨て台詞を吐いて逃げようとするお嬢様。
しかし、清乃はそれを許さなかった。
「くだらないのはあんたのそのプライドの方でしょう?さっさといなくなって欲しいのは山々だけど、その前に滋子と千紘さんに謝りなさいよ。さもなければあんたのお父様の会社に明日はないから」
それは冗談でも脅しでもなく事実であった。
清乃の父は、プライドだけあって他人を蔑ろにする人間を嫌う。
清乃が父親に一言情報を流せば、取引は停止し、建設業界で生き残ることは難しくなるだろう。
「な、なによ、そんな脅しに誰が···」
頑なで愚かな志津子お嬢様が墓穴を掘ろうとした時、
「申し訳ありません。滋子社長、そして鷹司様。ほら、お前も謝らないか」
騒動を聞きつけて、仲介に入ったのは彼女の父親である東原直澄(ひがしはらなおずみ)その人であった。
「お父様!この人私を侮辱して」
「先に他人を貶める言動をしたのはお前だろう?」
いつまでもお嬢様気分の抜けない志津香と違って、父親はまともだったようだ。
「ご無沙汰しております。清乃お嬢様」
「あなたの娘さん?随分と偉い御身分のようね?」
「面目もございません」
「面目とかどうでもいいの。滋子と千紘さんを馬鹿にしたこと、二人が許しても私は許さないから」
ラスボス感満載の清乃は、もはや魔王のような存在感を醸し出していた。