轍(わだち)〜その恋はお膳立てありき?
「ウー···」
清乃が目を開けると、彼女の身体は、スプリングの良く効いた、とても触り心地の良い高級なベッドに横たわっていた。
辺りは暗闇でよく見えないものの、自分が何か異質なものに包まれていることは明確にわかる。
ポカポカと暖かく、自分を包み込む安心感を与える何か。
そう、それはまるで、幼い頃に一緒に眠った兄や父親のような暖かさで···。
「っていうか、お肉!お金払ってないし!」
思わず叫んでしまったが、隣に誰かが寝ていることに気づき、自分の口を片手で覆う。
「ふっ、目覚めて第一声がそれか」
「そ、その声は、タカシさん?!」
若干、夜目の効かない清乃は、目を細めて、目の前に横たわる何者かを見定めようと試みた。
「そうだ、だから安心して寝ろ。まだ朝まで時間がある」
“安心する要素皆無なんだけど”
暗闇で聴く、寝起きの低音ボイスは若干の色気も孕んでいて、大変美味しい···いや有り難い···もとい耳に優しい声色。
人気声優からのファンサ(ファンサービースの略)か?と、興奮いや勘違いしそうになるではないか。
続いて“頭ポンポン”のおまけ付きだ。
二次元ではイケメン限定とされる“頭ポン”のお家芸を、またも出血大サービス(死語)代金フリーで提供してくれるタカシ。
それに加えて、この部屋に至るまでの経過を思い出せない状況。
清乃の頭は若干、パニック状態に陥りつつあった。
「い、今何時···」
「夜中の一時だ。生憎、外は記録的な大雪で交通機関は止まっている」
“夜中の一時、だと?!しかも寒波って何?!”
二徹後の睡眠不足だった清乃は、時間の感覚どころか、世間の情勢や天候の変化に疎かった。
しかも、高級料理店で大食い、無銭飲食を披露したあと。
挙句の寝落ちと、ベッドへの救急搬送?というフルコンボ。
呆れもせず(呆れてはいるだろうが)、ここまで付き合ってくれたタカシさん、優しい笑顔で料理を提供してくれた料理長にも、顔向けができない···。
"とりあえずは謝罪をば"
そう考えて、勢いよく起き上がろうとした清乃だったが、何故か、再び、逞しいタカシの腕の中に抱き込まれてしまった。
"羽交い締め?!"
「た、タカシさん···」
「清乃の憂いていることは、大概大丈夫だから、今は寝ろ」
"エスパーかな?"
「はい」
清乃は、何が大丈夫なのか、さっぱりわからなかったが、首をかしげながらも、ここは素直にタカシに従うことにした。
着てきた振り袖は見当たらないし、あったとしても自分で着付けはできない。
よくよく考えてみれば、昨日会ったばかりの男にいつの間にか知らない部屋に連れ込まれている状況。
その上許可なく抱き込まれている。
当然、清乃には怒る権利も、拒否する権利もあったのだが、外は暖房も効かなそうな大寒波到来!らしい。
タカシの腕の暖かさや、なんとなく安心するイケメンのいい匂いと程よい筋肉具合(セクハラ)。
清乃は抵抗するという思考を徐々に失っていった。
“イケメンからのファンサは受け取るしかないでしょう?”
滋子もこの機会を逃さずに、仕事のためにイケメンを堪能しろと言っていたような気がする。
「もしかして、都合の良い夢かな···?」
ボソリと呟いた清乃に、隣のタカシは何も言わずに、ポンポンと頭を撫でてくれた。
面倒臭がりやの清乃は、それを同意と取った。
穏やかで安心するそのリズムに「まあ、いいか」と、清乃は、再度、夜の闇に溶けていった。
清乃が目を開けると、彼女の身体は、スプリングの良く効いた、とても触り心地の良い高級なベッドに横たわっていた。
辺りは暗闇でよく見えないものの、自分が何か異質なものに包まれていることは明確にわかる。
ポカポカと暖かく、自分を包み込む安心感を与える何か。
そう、それはまるで、幼い頃に一緒に眠った兄や父親のような暖かさで···。
「っていうか、お肉!お金払ってないし!」
思わず叫んでしまったが、隣に誰かが寝ていることに気づき、自分の口を片手で覆う。
「ふっ、目覚めて第一声がそれか」
「そ、その声は、タカシさん?!」
若干、夜目の効かない清乃は、目を細めて、目の前に横たわる何者かを見定めようと試みた。
「そうだ、だから安心して寝ろ。まだ朝まで時間がある」
“安心する要素皆無なんだけど”
暗闇で聴く、寝起きの低音ボイスは若干の色気も孕んでいて、大変美味しい···いや有り難い···もとい耳に優しい声色。
人気声優からのファンサ(ファンサービースの略)か?と、興奮いや勘違いしそうになるではないか。
続いて“頭ポンポン”のおまけ付きだ。
二次元ではイケメン限定とされる“頭ポン”のお家芸を、またも出血大サービス(死語)代金フリーで提供してくれるタカシ。
それに加えて、この部屋に至るまでの経過を思い出せない状況。
清乃の頭は若干、パニック状態に陥りつつあった。
「い、今何時···」
「夜中の一時だ。生憎、外は記録的な大雪で交通機関は止まっている」
“夜中の一時、だと?!しかも寒波って何?!”
二徹後の睡眠不足だった清乃は、時間の感覚どころか、世間の情勢や天候の変化に疎かった。
しかも、高級料理店で大食い、無銭飲食を披露したあと。
挙句の寝落ちと、ベッドへの救急搬送?というフルコンボ。
呆れもせず(呆れてはいるだろうが)、ここまで付き合ってくれたタカシさん、優しい笑顔で料理を提供してくれた料理長にも、顔向けができない···。
"とりあえずは謝罪をば"
そう考えて、勢いよく起き上がろうとした清乃だったが、何故か、再び、逞しいタカシの腕の中に抱き込まれてしまった。
"羽交い締め?!"
「た、タカシさん···」
「清乃の憂いていることは、大概大丈夫だから、今は寝ろ」
"エスパーかな?"
「はい」
清乃は、何が大丈夫なのか、さっぱりわからなかったが、首をかしげながらも、ここは素直にタカシに従うことにした。
着てきた振り袖は見当たらないし、あったとしても自分で着付けはできない。
よくよく考えてみれば、昨日会ったばかりの男にいつの間にか知らない部屋に連れ込まれている状況。
その上許可なく抱き込まれている。
当然、清乃には怒る権利も、拒否する権利もあったのだが、外は暖房も効かなそうな大寒波到来!らしい。
タカシの腕の暖かさや、なんとなく安心するイケメンのいい匂いと程よい筋肉具合(セクハラ)。
清乃は抵抗するという思考を徐々に失っていった。
“イケメンからのファンサは受け取るしかないでしょう?”
滋子もこの機会を逃さずに、仕事のためにイケメンを堪能しろと言っていたような気がする。
「もしかして、都合の良い夢かな···?」
ボソリと呟いた清乃に、隣のタカシは何も言わずに、ポンポンと頭を撫でてくれた。
面倒臭がりやの清乃は、それを同意と取った。
穏やかで安心するそのリズムに「まあ、いいか」と、清乃は、再度、夜の闇に溶けていった。