不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。









ポタリ、ポタリと綺麗な涙が落ちていく。


夕夏さんは涙と嗚咽で何度も言葉を詰まらせながらも、それでも全部を打ち明けてくれた。






中学校最後の登校日に、ありったけの勇気を振り絞って律くんに告白をしたこと。


夕夏さんの真剣な気持ちを汲んで、律くんは丁寧にお断りをしたこと。



その理由も詳しく話してくれたこと。


それからは必死に友達のフリをしてきたこと。

幼なじみという関係から抜け出したのに、それができなかったこと。







「ごめんなさい……っ、南野さん!」


何度も何度も謝ってくれる彼女に、何か気の利いたことを言って顔を上げてもらおうと乏しい語彙をかき集めてみたのだけれど、こういう時に限って何も思い浮かばない愚かな私は、言葉の代わりに背中をさすって様子を伺う。






< 193 / 259 >

この作品をシェア

pagetop