エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
「映美さんは、いつ頃から清都を?」

お母様の質問に、てっきりもう次の話題に移るものだと油断していた私はドキッとする。

「私は、店長になってから清都さんに大変支えていただき、頼りがいのあるお人柄や優しさに惹かれまして……」

ご両親の前で惚気けているみたいで、こそばゆくなった。
けれども、思いのほかすらすらと言葉が口から出てくる。だってこれは、本心だからだ。

「清都さんはいいところは褒めてくれて、足りない部分をフォローしてくださいます。スタッフからもお客様からもすごく慕われていて、仕事の面でも人間としても心から尊敬しています」

酔っ払い客にも、オーダーをミスしたスタッフにも嫌な顔ひとつせず、いつも誰かの手助けに積極的だった。
上司としてもひとりの男性としても、魅力的だと強く思う。

自信を持って言い終えた私を見て、清都さんがフッと頬を弛緩させた。

「いつもはあまりこういう話をしないから、改めて聞くとうれしいよ」

たじろぐ私に対し、清都さんはとてもスマートに片目を細めて目配せをする。

「あら、それならたまにはこういう機会も必要ね」

上品に笑ったお母様が、冗談めかして言った。
演じていることを忘れ、素で恥ずかしくなってくる。

そんなとき、食事の手を止めて私の話を聞いていたお母様が、さり気なく私の薬指を見た。

「乃愛(のあ)ちゃんのことは残念だけど、仕方ないわね。こればっかりは」

お母様はお父様と目を合わせ、少し寂しげに睫毛を伏せた。

"ノア"さんとは、清都さんの婚約者だろうか。
独り言みたいに呟かれたので、気にはなったけれど聞いたりはできなかった。

食後のハーブティーが運ばれてきて、緊張で時間が過ぎるのが遅く感じた食事会も、ようやく終盤に差しかかる。

「今日は清都の仕事っぷりも知れたし、映美さんとの馴れ初めも聞けて本当に楽しかったわ」
「私もとても楽しかったです」

お母様に笑顔を向けた矢先、真横からの視線に気づいた。
ニコリとした清都さんに私も微笑みかけたけれど、なんだか心の中はモヤモヤする。
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