エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
正直、ご両親からこんなに和やかに受け入れてもらえるとは思わなかった。

だって私は白鳥社長がセッティングした結婚を阻む張本人なのだ。
もっと険悪なムードだったり、不穏な空気になるんじゃないかと想像したりもした。

少し肩透かしを食らったのと同時に、清都さんがいつも凪いだ海のように穏やかなのは、このご両親の影響なんだなと心底感じる。

だからこそ、申し訳ない気持ちにもなった。
優しいご両親を騙すような真似をして、バチがあたらないかな。

食事を終え、レストランの前で別れるとき。

「これからも清都をよろしくね、映美さん」
「……はい。こちらこそよろしくお願いします」

ご両親に深々とお辞儀をする。
罪悪感はあるけれど、やっと肩の荷が下りる、と安堵したときだった。

「ああ、そうだ清都。支配人が部屋を用意してくれたから、もしよかったらふたりで泊まっていきなさい」

半分踵を返した白鳥社長が、去り際に言い残した。

「ありがとうございます、父さん」

清都さんは機敏に一礼する。

するとわずかばかり口角を上げた白鳥社長の目線が、一瞬こちらに向いた気がしたので、私も急いで頭を下げて見送った。

ご両親が去っていく様子を眺めながら、私は激しく動転し始める。

"ふたりで泊まる"?

「清都さん、お久しぶりです」

困惑しているうちに『支配人』のネームプレートを付けた男性が私たちの前に現れた。

清都さんと支配人は親しげに会話を交わし、案内されるがまま私たちはエレベーター前に移動する。

「ホテルの経営者と父が旧知の仲なんだ」

清都さんがこっそり私に耳打ちをした。

せっかくの機会だから、恋人同士でベイサイドの夜景を堪能していきなさい、という白鳥社長の親心だろう。
私を彼女として認めてくださったのだろうか。

そんな父親の気遣いに対し、清都さんが気まずそうにしている理由は明白。

私たちが、本物の恋人同士ではないから。

「こちらのお部屋をお使いください。当ホテル自慢のスイートルームです」
「ありがとうございます、支配人」

最上階で到達したエレベーターを降り、部屋の前で支配人と別れる。
解錠して室内に入ると、目の前には予想以上に広い空間が広がっていた。
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