エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
けれども、中途半端な覚悟では到底育てられないだろう。
幼い頃から母を見ていたのもあり、シングルマザーとして育児と仕事を両立させ、毎日健やかに不自由なく育てるのは容易くはないと想像できた。

決意が揺れ動くなか、産婦人科クリニックを受診すると、妊娠六週目に入っていた。
モニターで胎嚢を見せられて、私の頭の中から産まないという選択肢はなくなった。

この子は私の中ですでに生きているんだと思ったら、不思議な気持ちと同時に、これまで経験のない心が震えるような感情がこみ上げてくる。

初めての出産に対する不安や恐怖心はあるけれど、母親になることに対しては私にはもはや迷いはなかった。

帰宅して、すぐに母に決意を伝えた。
娘の結婚を楽しみにしていた母は、シングルマザーの道を選ぶ私にショックを受けた。

相手を聞かれ、正直に清都さんだと話した。
大きな仕事で海外に渡った大企業の御曹司という、住む世界が違う相手が父親だと知り、母は反対した。

なにより女手ひとつの大変さを身を持って体験している母には、私の気持ちを理解してはもらえず、一緒に暮らしながらも不穏な雰囲気がしばらく続いた。
お互いに折れず、顔を見れば言い合いになる日々は正直かなり辛かったけれど、私だって譲れない。

だから、私は母に何度も何度も自分の思いを伝えた。
言葉だけじゃなくて態度でも示そうと、なるべく自立できるよう、保育園の手続きを行政に相談し、働きやすい職場を探した。

プリズムではスタッフに内緒にして、お腹が目立つ前に退職する運びだった。
ただ、信頼している亜紀さんと千花ちゃんにだけは真実を打ち明け、清都さんには黙っていてほしいと懇願した。

ふたりは私が言いよどむ様子を見て、今でも私たちの関係を深くは聞かないでいてくれる。
体調を心配したり、退職後も頻繁に連絡を取り合い、気遣ってくれてありがたい。

特に亜紀さんとは、彼女と彼女のご両親が切り盛りしているカフェバーに私がよく遊びに行くので、家族ぐるみの付き合いが続いている。
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