エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
「映美さんも帰国した副社長に会いましたか?」

メニューをパタリと閉じた千花ちゃんが、言いづらそうに小声で聞いた。

「うん、光太のことがバレてね」
「え! それで、どうしたんですか⁉」
「ええと、距離は縮まりつつあるっていうか……」

話すと長くなるので、私は濁して曖昧に笑った。

プロポーズは保留のままだけれど、光太の成長をともに見守るのを同意し、私の気持ちはかなり前向きになっている。

清都さんが私と光太のことを真剣に考えているとわかったし、それに私自身、父親という存在がもたらす喜びを感じ始めているからだ。

思い返せば私も、母ひとり子ひとりで決して不自由したわけじゃないけれど、父親がいたらもっと楽しいのかなと思う時期もあった。

同姓の母と言い合いになったとき、もしも父がいたらどっちの味方をするのかな?とか予想したりもした。
成長し、思春期に入れば嫌厭する存在になるかもしれないけれど、そういう現象にすら憧れていたほど。

だから光太に父親がいるのは、とても幸せだと思うのだ。

光太にとっても、私自身にとっても……。
清都さんの存在は大きな拠り所になりつつある。

「今度、乗り物のテーマパークに行く約束をしたんだ」

ミニカー好きの光太の様子を見て、楽しめそうな施設を清都さんが調べてくれた。
来週末に一緒に行く予定になっている。

「そうなんですか、楽しそうですね!」

亜紀さんが注文を聞きにきて、千花ちゃんはオムライスを、私はナポリタンを頼んだ。

厨房から酸味の効いたトマトケチャップのいい匂いがしてきたとき。

「でも副社長も大変ですよね、社長が病に倒れられて」

声を潜め、心配そうに眉を下げた千花ちゃんに、私は目を瞠った。

「え? 病?」
「あれ、聞いてませんか? 社長、先月から入院しているんです。今うちの会社は副社長の手腕で業界トップを走り続けていると言っても過言ではないので、このまま世代交代するのではと社内ではもっぱらの噂ですよ」

当然のように説明する千花ちゃんに対し、私は初めて耳にする事態に驚いた。
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