月下の逢瀬
「俺も海は見る方が好きかな」


緩やかにカーブを描く海岸線から、車は山手の方へと進路を変えた。


「あの山の中腹辺りにあるんだ。ちょうど海が見下ろせる」


指差した先に、お寺の屋根らしきものが見えた。


「……と。少し待ってて」


行く手に花屋が見えると、先生は車を店の前に寄せた。
するりと降りて、戻ってきた時には、季節外れのひまわりの花束を抱えていた。


「お待たせ」


「うわ。綺麗ですね」


「好きな花なんだ、これ」


急に華やかになった車内。
先生は花束を後部座席に起き、車を出した。


少し山道を走ると、下から見えていた屋根は小さなお堂のものだというのが分かった。

舗装されていない駐車場に車を止めた先生が、花束を手にして外に出る。
あたしもそれに続いて降りた。


「行こうか」


「はい」


山の中にあるせいなのか、ひんやりした空気の中、先生の示す方へついて行く。

お堂の奥に、墓地はあった。


「こっち」


「あ、はい」


急に口数の減った先生は、気のせいか顔が強張っているようだった。


< 120 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop