月下の逢瀬
幾つも並んだお墓。
馴れた場所なのか、先生は、一つの墓石を目指して歩く。
「誰も、来てないのか」
そう言うと、ゆっくり近づいていく。
先生の立ち止まったそこには、『渡辺家之墓』と刻んであった。
先生とは、名字が違う。
すとん、と膝を落とした先生は、ひまわりの花束をそっと供えた。
その鮮やかな色を見つめたまま、動かない。
一体、誰のお墓なんだろう。
視線をさまよわせていると、墓誌の一番新しいところに、『佐和』と名前が入っていた。享年二十七で、没年は、二年前。
二年前って、確か……。
水族館での、寂しそうにしていた先生の横顔を思い出す。
でも、あれはお兄さんの話、だったよね。
動かない背中を見つめる。
と、先生が深いため息をついた。
「……ここに来るのは、最後にする」
あたしではない、誰かに語りかけるように呟く。
「さようなら、佐和」
そっと手を合わせ、頭を垂れる先生。
あたしも先生の後ろで、手を合わせて目を閉じた。
誰なのか分からないけれど、先生にとって、すごく大切な人だったのだというのが分かる。
仕草にも、声音にも、それが滲んでいた。
馴れた場所なのか、先生は、一つの墓石を目指して歩く。
「誰も、来てないのか」
そう言うと、ゆっくり近づいていく。
先生の立ち止まったそこには、『渡辺家之墓』と刻んであった。
先生とは、名字が違う。
すとん、と膝を落とした先生は、ひまわりの花束をそっと供えた。
その鮮やかな色を見つめたまま、動かない。
一体、誰のお墓なんだろう。
視線をさまよわせていると、墓誌の一番新しいところに、『佐和』と名前が入っていた。享年二十七で、没年は、二年前。
二年前って、確か……。
水族館での、寂しそうにしていた先生の横顔を思い出す。
でも、あれはお兄さんの話、だったよね。
動かない背中を見つめる。
と、先生が深いため息をついた。
「……ここに来るのは、最後にする」
あたしではない、誰かに語りかけるように呟く。
「さようなら、佐和」
そっと手を合わせ、頭を垂れる先生。
あたしも先生の後ろで、手を合わせて目を閉じた。
誰なのか分からないけれど、先生にとって、すごく大切な人だったのだというのが分かる。
仕草にも、声音にも、それが滲んでいた。