月下の逢瀬
晃貴がそう言うと、理玖が安心したように顔を上げた。


「理玖くん、ありがとね。心配してくれて」


母が目尻の涙を拭いながら言った。


「真緒は理玖くんにべったりくっついてたものね。兄妹みたいなものだったから」


「うん。大事な……幼なじみだから」


母の言葉に、理玖が呟いて。


「真緒。その……、幸せに」


と、ぎこちなく笑った。


「ありが、と」


口を開けば、押し止めている涙が溢れてしまいそうだった。

早く離れた方がいい。
気持ちを振り切るように、あたしはタクシーに乗り込んだ。


「もう行こ、晃貴さん」


「あ、ああ。じゃあ」


ドアが閉まり、窓の向こうの両親が手を振る。
それに応えながら、母の後ろに立つ理玖の姿をちらりと見た。


逸らすことなく、真っすぐに見つめる理玖と、視線が絡み合った。
何か言いたげに、唇が動くのが見えた。


「理……」


身を乗り出しかけた時、車は走り出した。

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