愛よりもお金が大事。
月曜日。


出社してすぐに、前田課長にデスクに呼ばれた。


「夏村、お前暫く一課に移ってくれないか?」


「え?一課ですか?」


え、何か私仕事でミスでもしたかな?と、とっさに考える。


「お前の同期の牧原が、明日から産休だろ?」


それで、合点が言った。


「美里の代わりですね?」


牧原美里(まきはらみさと)も、私や冬野とは同期。
そして、親友と言っていい程、私とは仲良し。


「まあ、そうだな…。
新人のフォローと言うか」


今年、営業一課には二人の新入社員が入って来たけど。
まだ新人も新人で、美里の代わりは荷が重いのだろう。
かと言って、同じ営業でも、一課だけは他の営業の課とガラリと仕事内容が違うので、私でも荷が重いかもしれない。


「まあ、フォローなら…」


少し、弱気になってしまう。


チラリ、と冬野に目線を向けると、こちらを見ていた。


一課に行くという事は、暫く冬野の隣のデスクともお別れ。
同じフロアだけど、今居る営業二課と一課は部屋が違う。


これから暫く、会社で冬野と滅多に会えないかも、な。


前田課長との話の後。
自分のデスクに戻ると。


「暫く、一課に行くんだろ?」


先程の前田課長との話が聞こえていたのか、それ以前に知っていたのか、冬野からそう話し掛けられる。


「そう。ちょっくら、行って来るね」


なんだか寂しくて、あえて明るく笑う。


「一課なら、今より残業少ないだろうし。
こないだの件、もう一度考えてて」


こないだの件……。


ああ、日曜日の昼に一緒に何処か行こうって件か。
だから、それは無理だって…と思うけど。


これから会社であまり冬野に会えなくなるなら。


「善処します」


そう答えると、なにとぞ前向きに、と笑って返された。

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