愛よりもお金が大事。


「…やっぱり、辞めて下さい」


頭の中に、冬野の顔が一杯浮かんで。
やっぱり、こんなの無理だって思った。


「えー、こんな直前にそれって酷くない?」


「酷いと思います。
岡崎社長、ごめんなさい」


私は、誠心誠意頭を下げた。


「謝られても」


「もちろん、ここのホテルの代金は、私が払います!」


「じゃあ、12万円。夏村さんが払って?」


12万円…。



「…分かりました」


一課に移り、休日出勤や残業が減ったので、今月の給料はいつもよりきっと少ないのに。



「でも、断るのに、謝罪や返金だけじゃなくて、それなりに俺が納得出来る理由を話して?」


それは、そうだな。


「…私は冬野が好きなんです。
岡崎社長が納得出来るか分からないですけど、それが理由です」


そう告げると、岡崎社長は口角を上げて微笑んだ。
そして、私を置き去り窓の方へと歩いて行った。


「夏村さん、この部屋から見下ろす街並み凄く綺麗だから、見ない?」


私の方を振り返り、そう誘ってくれる。
結局、岡崎社長が納得してくれたのかよく分からないけど、機嫌は良さそうで、それに安堵した。


言われたように、私も窓の方へ近付いて行く。


< 70 / 96 >

この作品をシェア

pagetop