愛よりもお金が大事。
「…やっぱり、辞めて下さい」
頭の中に、冬野の顔が一杯浮かんで。
やっぱり、こんなの無理だって思った。
「えー、こんな直前にそれって酷くない?」
「酷いと思います。
岡崎社長、ごめんなさい」
私は、誠心誠意頭を下げた。
「謝られても」
「もちろん、ここのホテルの代金は、私が払います!」
「じゃあ、12万円。夏村さんが払って?」
12万円…。
「…分かりました」
一課に移り、休日出勤や残業が減ったので、今月の給料はいつもよりきっと少ないのに。
「でも、断るのに、謝罪や返金だけじゃなくて、それなりに俺が納得出来る理由を話して?」
それは、そうだな。
「…私は冬野が好きなんです。
岡崎社長が納得出来るか分からないですけど、それが理由です」
そう告げると、岡崎社長は口角を上げて微笑んだ。
そして、私を置き去り窓の方へと歩いて行った。
「夏村さん、この部屋から見下ろす街並み凄く綺麗だから、見ない?」
私の方を振り返り、そう誘ってくれる。
結局、岡崎社長が納得してくれたのかよく分からないけど、機嫌は良さそうで、それに安堵した。
言われたように、私も窓の方へ近付いて行く。