孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
 いくらお金持ちとはいえ、さすがにもう余計なお金は使わせられないと思ったのだが、そう言われるとなにも反論できなくなる。本当に超庶民の私についていけるのか……。

 さっそく不安がよぎるも、気だるげにハンドルに手をかけたセクシーな彼が流し目を向けてくる。

「それとも、今夜から俺の家に来るか?」

 さらりと問いかけられ、心臓が飛び跳ねた。さすがにしょっぱなからご自宅にお邪魔するのは無理!

「俺は一向に構わないが」
「ここでお願いします!」

 即座にそう答えると、彼は面白そうに小さく笑った。

 ホテルのロビーで座っているよう言われ、おとなしく待っている間に黒凪さんがカウンターで受付を済ませてくれた。幸いキャンセルが出て部屋を取れたというので、ありがたく宿泊させてもらう。

 しかし、この部屋というのがまた驚きだ。ホテルマンに案内されたその中へ入った私は、東京の夜景が一望できる広々としたリビングと、その奥にあるベッドルームをぐるりと見回して呆気に取られる。

「まさか、これが俗に言うスイートルーム……!?」
「空いている部屋がここしかなかったんだ。ひとりでは持て余すかもしれないが、まあゆったり過ごせていいだろう」
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