転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
なんとなくだけど、両親が隣にいてくれれば今日のお見合いも乗り越えられる気がした。ドタキャンなんかして父の顔に泥を塗りたくないっていうのもあるけれど、両親のように立ち向かう強さを持ちたかった。
それに、逸生さんもドタキャンで逃げることは絶対にしないと思うから。今更逸生さんに相応しいもくそもないけど、逸生さんが好きだと言ってくれた自分をもっと好きになろうと思った。
相手の人とふたりきりになった時に、私から断りを入れよう。両親は前向きだけど、私が無理だからって。
「それよりお父さんはどこに行ったの?さっきから姿が見当たらないけど」
「あら、ほんとね。さっき散歩がてらコンビニに行ってくるって言ったきり帰ってこないわ。きっと緊張してじっとしていられないのね」
じっとしていられないにしても、出発時間まであと30分を切っている。遅刻した上に縁談を断るのはさすがに気が引けるため、一刻も早く帰ってきてほしい。
「…電話してみようかな」
そう零し、スマホを手に取ったその時だった。
「たーだいまー」
玄関で物音がした矢先、大きな声がリビングまで届いた。どんどん近付いてくる足音に弾かれたように振り返れば、そのままリビングに入ってきた父は「いやー参った参った」なんて言いながらドカッとソファに腰を下ろす。
外はまだかなり冷えるはずなのに、その額には薄らと汗が滲んでいる。すかさず「何してたの?」と問いかければ、父は私に視線を移しながら「いつものことだよ」と目を細めた。