転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「私の気持ちは先日お伝えした通りです。紗良さんを思う気持ちは誰にも負けない自信があります。紗良さんを一生かけて幸せにすると約束します。なので、結婚を前提にお付き合いさせていただくことを認めてもらえないでしょうか」
お見合い...というよりは、公開プロポーズをされている気分だった。迷いなくはっきりと紡がれた言葉に胸が熱くなり、一気に脈が速くなる。
先日お伝えした通りって、一体なにを伝えたの?とか、聞きたいことは山ほどあるけど。そんなことも、もう全部どうでもよくなるくらい彼の言葉が胸に響いた。
こうして会えただけでも胸がいっぱいなのに。容赦なく私の心を掴んでくる彼がいつにも増してカッコよく見えて、思わず見惚れてしまった。
お母さんなんて、いつの間にかハンカチを目頭に当てて鼻をすすっている。まだ私でさえ泣いていないのに、なんならさっきまで料理の話しかしていなかったくせに、誰よりも感極まっているから不思議だ。
でもそんな涙にさえ釣られそうになるのは、全部逸生さんのせい。逸生さんの言葉が、私の心を簡単に突き動かした。
「…逸生くんの気持ちは、私にはもう充分に伝わっているよ。だから、今日私達から逸生くんに伝えることは、もう何も無いんだ」
な、お母さん。父は目尻を下げながら、隣の母に声をかける。それを受けた母は、ハンカチで目元を押さえたままコクコクと頷いた。
「見ての通り、我が家は本当にごく普通の家庭です。私は父の会社…今は兄が経営している会社に携わってもいない。それでも九条さんやシゲさん、他の皆が紗良を受け入れてくださるなら、そしてふたりが幸せになれるのなら、むしろこちらからお願いしたい気持ちです。シゲさんの周りには、きっとあたたかい人達で溢れていると思うから。紗良もそういう人であってほしいし、そういう人達に囲まれていてほしい。親の私から言えるのは、それだけです」
言い終えた父は、ゆっくりと私に視線を移す。
「でも、最終的にはふたりが決めることだから。紗良、あとはお前がどうしたいかだよ」
父が私に委ねると、皆の視線が一斉に此方に移った。