転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
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「逸生さん、正直私はまだ話が掴めていなくて。良ければ詳しく説明していただきたいのですが…」
窓一面の夜景を一瞥してから、正面でグラスのお水を口に運ぶ逸生さんを見据える。ふたりきりになった空間で、逸生さんもまた夜景を視界に捉えてから、私に視線を移した。
「ごめんな、驚かせて」
グラスをテーブルに置いた彼は、軽くネクタイを緩めながら呼吸を整える。私の両親が席を外して気が緩んだのか、その表情はいつもの彼に戻っていた。
「やっとふたりきりになれたから、ゆっくり説明する」
先程お互いの両親は食事を済ませると、私達をふたりきりにするため席を外してくれた。その提案をしたのは意外にも社長で、彼の言葉を聞いた母は隣で安堵の息を吐いていた。きっと、スカートが相当キツかったのだと思う。
そんな母達の背中を見送り、ほっと息をついたのも束の間。やっとふたりきりになれたのはいいけれど、私の中にはまだたくさんの疑問が残っているため、甘い空気にはならなかった。
「あの、どうしてお見合い相手が逸生さんになったんですか?そもそも、父と九条家が繋がっていたなんて知りませんでした」
このお見合いが始まってすぐ、確かに彼らは“久しぶり”と言った。それだけでなく、父は会長を“シゲさん”と親しげに呼んだ。
父は人脈のある人だとは思っていたけれど、ごく普通の一般人である父が会長と親しい理由は、いくら考えても分からなかった。
「紗良のお父さんとじいちゃんが知り合いだったってこと、俺もこないだ初めて知ったんだ。しかも、今でもたまに連絡を取り合うくらい仲がいいらしい」
「…一体どこで、どうやって知り合ったんでしょう。我が家のような一般庶民が、会長と接する機会なんてない気がしますけど」
「歳の離れたふたりだから、俺も最初は不思議に思った。でも理由を聞いたらすぐに納得出来たよ」
そう紡いだ彼は、私の目を真っ直ぐ見据えたま柔らかい笑みを浮かべた。