転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします


「では、社長が私達のお見合いを認めてくれたのは、父が会長を助けた人だから…?」

「それもあるけど、それだけじゃない」

「え…?」

「紗良の伯父さん、会社を経営してるって言ってたよな?実はその伯父さんと俺の親父が、古くからの友人らしいんだ」

「うそ…」

「紗良の伯父さん、糸島(いとしま)社長だったんだな。糸島社長の会社は九条グループの取引先でもあって、俺も何度か会ったことがあるけど、紗良と姓が違うから気が付かなかった」


予想外の繋がりに、目を丸くしてぱちぱちと瞬きを繰り返す。そして「だから社長は…」と呟けば、逸生さんはこくりと頷いた。


「うん。糸島社長の姪ならって、承諾してくれた」


そういえば私が逸生さんの秘書になったばかりの時、パーティー会場で伯父さんを見かけたことがある。その時は咄嗟に隠れてしまったけれど、あそこに彼がいたのは、やっぱり九条グループと繋がっていたからなんだ。

周りの人達がこんなにも繋がっていたというのに、今日まで気が付かなかったなんておかしな話だ。でもそれは、私が九条で働いていたことを、ずっと父に内緒にしていたせい。

こんなことなら、もっと早く伝えていればよかった。


「紗良、実は俺会社を辞めようとしてた。辞めて、家族と縁を切って、何にも縛られてない状態で紗良を迎えに行くつもりでいた」

「え…」

「紗良がせっかく俺と家族の絆を繋ぎ止めようとしてくれたのに、ばかな話だろ。でも俺にとっては紗良の方が大事だったから。ていうか、俺の幸せの先にいるのが紗良だったから」


ぽつぽつと語る彼は、私から視線を逸らし自嘲気味に笑う。そして「紗良のいない未来なんて考えられなかった。断られても、何度でも伝えるつもりだった」と真っ直ぐに伝えられ、その言葉に胸がぎゅっと締め付けられた。

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