転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「でも、そのことを親父に伝えてる時に、じいちゃんが部屋にやって来て。俺の話を盗み聞きして事情を知ったじいちゃんが、俺を紗良のお父さんのところまで連れてってくれたんだ」
「会長が…?」
「秋頃、あの公園でじいちゃんに会ったの覚えてる?確か稲葉さんからお饅頭を貰った日」
「はい、覚えてます」
「あの時、紗良がじいちゃんに自己紹介したよな。それでじいちゃんはピンときたらしい。名字と顔で、知り合いの娘だって」
「凄い…それで気付いてくれるなんて」
「しかもじいちゃんは紗良のお父さんがお見合い相手を探してるのも知ってたんだ。“春に娘がお見合いする予定だから、近くにいい男はいないか”って、相談されてたとかなんとか」
「…お父さんったら、会長にそんなお願いを…」
「でも、そのお陰でこうして会えた。じいちゃんだけでなく、俺も紗良のお父さんに救われたんだよ」
逸生さんは穏やかに紡ぐと、続けて「お見合い、急かして悪かった。紗良が他の人と結ばれたらどうしようって、めちゃくちゃ焦ってたから」と眉を下げて笑った。
確かにこのお見合いは急遽日程が決まったけれど、その必死な理由を聞いて、怒るどころか口元が緩みそうになった。むしろあんな突き放し方をした私を、会社を辞めてまで追いかけようとしてくれた彼の気持ちの大きさに、胸がいっぱいになった。
“お人好しでいいんだよ。人を大事にしていたら、いつか自分に返ってくるんだから”
ふと、父の言葉を思い出す。
父の“お人好し”が、私達を繋いでくれた。
お人好しで、過保護な彼が私の父で良かったと、心から思えた瞬間だった。