転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「紗良、あの時は泣かせてごめん。もう二度とその手を離さないって約束する」
「私も…あの時逸生さんの過去を背負えないなんて言ってごめんなさい。そんな事、本当は思ってないです。もう絶対に何があっても逸生さんのそばを離れません。これからは一番近くで逸生さんを支えたい…」
涙を拭い、彼の綺麗な形をした目を真っ直ぐ見据える。
「逸生さん、好きです」
そして再びぎこちなく口角を上げると、逸生さんも「ありがとう。俺も好き」と破顔した。
「紗良の笑顔、ほんと綺麗だな」
恥ずかしげもなくそう放った彼は、まだ慣れない笑顔を作る私をまじまじと見つめながら「まじで、油断したら心臓止まりそう」とため息混じりに呟く。
「…ちょっとまだ引き攣っているのが自分でも分かりますが…ちゃんと笑えてますか?」
「うん。破壊力は充分。他の男の前で笑ってほしくない親父さんの気持ち、よく分かる」
「え…ではやっぱり私は笑わない方が…」
「ううん。これからは一緒にたくさん笑おう。紗良と笑顔が絶えない家庭を築きたいから」
間髪入れず否定した彼を見て、きっと私の父のように我が子を溺愛する父親になる気がした。
自分が経験した苦しみを、我が子に与えないように。甘やかしすぎるくらい優しい父親に。
「紗良、帰ろうあの部屋に」
そう言って立ち上がった逸生さんは、私のそばまで来て腰を折り、耳元に顔を近付ける。
「早く、紗良に触れたい」
小さく囁かれ、ぞくりと身体が反応した。まだ触れられていないのに、身体に熱が帯びていくのが分かった。
触れたいのは私も同じだ。この距離すらもどかしい。会えなかった時間を、早く埋めたい。
迷わず「私もです」と頷くと、逸生さんは嬉しそうに目を細め「帰ろうか」と私の手を取った。