あくまくんが愛してやまない。




ざあざあ降る雨が周りの音をかき消している。


こんなにどしゃ降りになるなんて聞いてないよお……。


悲しくなりながらも、朝に母が持たせてくれた傘に感謝する。



「あっ、待って。わたし、教室の前に傘忘れてきた」



下駄箱で靴を履き替えていると、エミがそう言いだした。



「ごめん、ふたりで先帰ってて」



ぱちん、と両手を合わせて申し訳なさそうなエミに、慌ててぶんぶんと首を横に振る。




「ぜんぜん待っとくよ! 急いでないし!」


「いい、いい。わたし、そのまま裏門から帰るよ。そっちのが近いし」


「え、でも……っ」



どうしよう、と沢っちに助けを求める。

背の高い沢っちを見上げると、彼は優しい目で言った。



「糸原、びっくりするくらい気が利くことで」


「いや、これは本当に忘れたの。裏門から帰ったほうが近いのも本当」



「まあ、サンキュ。気をつけて帰れよ」


「はいはい。みゆうを頼んだよ」


「ラジャ」


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