炎と花びら
アンはソファから立ち上がる。その体は震え、目は赤く血走っていた。頭の中では、デイビッドに調べてもらったノーマンのことが離れない。

『ノーマン・ミラーという人物はこの世に存在していなかった。恐らく奴は、お前に近付くために新しい戸籍を専門のブローカーから買ったんだろうな』

ずっと信頼を置いていた相手は、この世界には存在しない人間としてそばにいた。アンはミネルバに大声で叫ぶように訊ねる。

「ノーマン・ミラー、彼は一体誰ですか!?あなた方は知ってるんですよね!!彼は何のためにあたしにーーー」

アンの言葉はそこで消える。彼女の着ていた白いブラウスは赤に染まり、アンのお腹は燃えるように熱くなっていた。

「は……」

何が起きているのか、何があったのか、まだアンは把握し切れていない。そんなアンを、ミネルバは冷たい目で見下ろしていた。







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